多汗症への対策は存在する。しかしリスクもあり、十分な情報収集が必要。

汗をかくメカニズムと、多汗症


アスファルトの照り返しが夏場にきつくなる都心部をはじめとして、とりわけ外を出歩く機会の多い方の中には、したたりおちる汗の多さに悩んでいる方も多いことでしょう。


手の下の契約書の用紙がぬれてしまうとか、接客で食事を出すときにお客様に不快感を与えるのではないか等、日常生活で不便を感じる場面も多くなります。

そのような方の中には、「自分は多汗症ではないのか?」と、内心ひそかに心配している方もいるかもしれません。


汗をかくだけならまだしも、わきがのにおいで、職場の同僚に不快感を与えているかも…といった心配を抱えている方も、少なくありません。


人によっては深刻な悩みともなるため、精神のバランスを崩し、うつ病や対人恐怖症などにつながるようなケースも決して珍しくありません。


多汗症は、単に汗をかくことと、どう違うのでしょうか。

通常、汗は体温調整のために汗腺(「エクリン腺」と言います)から出るもので、汗をかくことにより体温を下げる役割を果たします。

汗の成分はほぼ100%水分であり、本来的にこのエクリン腺からでる汗自体は、「無臭」なのです。


しかし、皮膚上に汗が分泌されたときに、汗に含まれるミネラル分によって、皮膚の表面に常に存在している細菌が繁殖し汗の成分が変質してアンモニアなどが発生します。

そして、俗に言う「汗くさい」においとなってしまいます。


ただし、ひとつ注意していただきたいのは、わきの下のにおい、いわゆる「わきが」にかかわる汗腺は、このエクリン腺ではなくて、「アポクリン腺」という別の汗腺なのです。


アポクリン腺は脇の下や陰部などにあり、動物が異性や仲間を呼び寄せるためにおいを出す機能が、人間に残ったものといわれます。

このアポクリン腺からでる汗には、たんぱく質などがより多く含まれているために、ほかの部分に比べると粘り気があってにおいの強い汗がでます。


夏場、洗濯の時にワイシャツなどの脇の部分が、汗で黄色く変色しているのにお気づきでしょう。

これは、たんぱく質の多い汗によりもたらされた変色です。


対策と治療、そしてボトックス


多汗症は、特に暑いとか激しい運動をしたわけでもないのに、緊張によって交換神経が強く働いて、手や足の裏、顔や脇の下に大量に、程度がはげしいときにはしたたり落ちるくらいの汗をかくほどの症状を指します。


多汗症のそもそもの原因は、遺伝的な理由や自律神経の調節機能障害などの諸説があるものの、いまだその特定にはいたっていません。

たんに暑いときにたくさん汗をかく方と、季節に関係なくまた特定の部位に大量の汗をかく多汗症の患者さんとは、その点において区別がなされます。


通常はシャワーなどでからだを清潔に保ち、とくににおいが気になる方は「制汗剤」を使う…というのが、これまでの対策と治療の基本線であり、また患者にとっても、ごく普通に行える対策でもあるわけです。


汗は水分とはいえ、皮脂腺からの油脂の分泌量が多くなると肌の表面でにおいのもととなることから、ふだんの食事の内容にも、気を配る必要があります。


とりわけ肉類など脂質の多い食品を、偏って多くとることを避けましょう。

肉類の摂取が多い欧米人に、わきがのにおいが強い人が多いことはよく知られているところです。


なお、ほかの医学的治療方法として、内服薬の服用や、塩化アルミニウム含液を多汗部に塗るなどの方法もあるのですが、これらはあくまで発汗を緩和する治療であって、症状を完治するためのものではありません。


また、最近注目を浴びているボトックス注射による治療ついては、どのような副作用があって、人体にどのような影響を及ぼすのかについての症例がいまだ十分ではなく、とくに多汗症への適応については、現段階では厚生労働省の承認もとれておりません。


治療費も数十万円台と高額であり、加えて効果の持続期間についても3~6か月程度といわれています。
また手術治療に比べても費用面では、最終的に高くつくことに注意が必要です。


多汗症へのボトックス治療を盛んに宣伝している美容外科などは少なくありませんが、その有効性については、上記のようなリスクがあることを踏まえ、あらかじめ複数の情報源から情報収集を行って判断することをおすすめします。


多そもそも手術で治るのか?


多汗症で日常生活や仕事に支障をきたすほど悩まれている方は、該当部位を手術することが、重要な選択肢となるでしょう。


エクリン腺は全身に分布している汗腺ですので、現在は、頭や顔、手や脇などの部位において、「内視鏡を
使って、発汗に関係する交感神経を遮断する手術」
が行われています。


しかし多汗症における手術治療は、短所もあります。

保険が適用される手術とはなりますが、十万円台となる費用面の問題もありますし、さすがに全身の手術ともいかない話です。

手術の成功率も100%というわけではなく、患者によっては再発の可能性も残るとされています。


また、手術による治療においては通常、「代償性作用」と呼ばれる副作用が発生します。


これは、手術によって患部の汗は止まるものの、かわりに胸やおなかなど別の部位に多く汗をかくようになるもので、手術後はほとんどの人に、この「代償性作用」が起こるといわれています。


この代償性作用による発汗を止める手術もあるのですが、発汗そのものは人体にとって体温調節のため不可欠の機能であること、また手術後の患者個人の満足度には個人差もあることから、手術するかどうかについてはあらかじめ専門医とよく相談されたうえで、そのリスクを確認したうえで検討すべきでしょう。


結論的にいえば通常の多汗症の場合、手術による直接的治療については、現在のところは「可能ではあるが、必要に応じ局所的に行うもの」となります。


わきがの場合、手術での解決は可能


一方で、わきがのにおいで悩んでいる場合、こちらは局所に存在するアポクリン腺を、手術で外科的に除去することでの解決が可能です。


手術治療においては、外科的切除による方法と、腺を吸引する方法があります。


外科的切除の場合、手術跡が残ることがあり、また吸引の場合は手術跡が目立たないものの、腺を完全に取りきれないというリスクが残ります。


手術には保険が適用され、3割負担の場合は4~5万円程度、手術時間も通常は数時間程度で終了します。



手術の効果は永続的ですので、とくにわきがのにおいや服への着色に悩んでいる方は、専門医に相談のうえ手術を検討されてみるのもよいでしょう。


最後になりますが、暑い季節の熱中症対策として、関連サイト「熱中症 症状・予防・応急処置のポイント 2分チェック」もあわせてお読みいただきますようお願いします。



参考サイト


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